科学技術情報流通技術基準

雑誌名の表記 解説




1. 制定の経緯

 旧基準の基準案策定は1976年,基準制定は1981年である。典拠とした ISO 4(Information and documentation ― Rules for the abbreviation of title words and titles of publications)の初版は1972年に制定されていた。

 国際的には,UNESCOの世界科学情報システム(UNISIST)計画に基づき,逐次刊行物に国際標準逐次刊行物番号(ISSN)を付与し登録する国際逐次刊行物データシステム(ISDS)が1975年に正式発足し,本部(ISDS国際センター)はパリに置かれた。ISDSでは誌名の略記をISO 4に準拠して行った。なお,同年に国際標準化機構(ISO)によりISSNについての規格ISO 3297が制定されている。日本では国立国会図書館内にISDS日本センターが設置され,1976年から本格的に活動を開始した。その後,ISDSは「ISSNネットワーク」となった。本部はパリのISSN国際センター(http://www.issn.org/)である。日本センターもISSN日本センター(http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/issn.html#network)に改称されている。

 旧基準は1987年に確認されている。また,技術的内容は変更されずに「JIS X 0801(雑誌名の情報交換用略記方法)」として1989年に日本工業規格(JIS)となり,1995年,2000年,2004年に確認されてきた。

 当初の基準は当時の科学技術庁(現文部科学省)が審議会「科学技術情報流通技術基準検討会」を設置して制定したが,2003年10月に「科学技術情報流通技術基準(SIST)」に関する業務全体が文部科学省から独立行政法人科学技術振興機構(JST)に移管された。JSTは移管後の最初の改訂作業として,継続検討課題であったSIST 02(参照文献の書き方)の改訂に加えて,JIS化されていた旧基準(SIST 05)及びSIST 06(機関名の表記)の改訂に着手した。2000年から急速に普及したインターネット等の情報通信技術(ICT)の発展により,情報環境が急速に広がっていることに対応する必要があった。


2. 改訂の基本方針

 旧基準の解説では当時の基本方針を次のように提示している。

(a)外国語による雑誌名を,外国語で引用・参照する場合は,ISO 4及びISDS誌名略記法リストを我が国の基準として採用する。
(b)日本語(漢字・かな)の雑誌名を,日本語で引用・参照する場合は,原則として略記しないものとする。
ただし,やむを得ず略記する場合の,略記が許容される条件及び略記の方法を示す。

 今回の改訂にあたっては,(a)の方針はそのまま踏襲したが,(b)については,「原則として略記しない」とした方針を「略記しない」とする方針に変更した。方針の変更に至った理由は,現在の情報流通環境においては日本語雑誌名の略記には以下のような問題点があるためである。

1)文献作成環境の変化
 旧基準作成時に比べ,一次文献作成における電子化,効率化が進んでいる状況で,本来完全な形で記載すべき雑誌名を略記することの必要性が薄れている。
2)二次情報提供機関における状況
 国内の主要データベース作成機関(国立国会図書館,国立情報学研究所,科学技術振興機構,日本医薬情報センター,医学中央雑誌刊行会)において,日本語雑誌名の略記は行われていない。
3)資料探索が困難
 略記された誌名から当該雑誌の正式誌名を復元することが困難な場合があり,当該資料にたどり着けないことがある。
4)電子ジャーナルリンクにおける問題
 電子ジャーナルにおける参照文献の記述において雑誌名が略記されていると,参照先の電子ジャーナルとのリンクができない場合が多い。

 また,旧基準ではその基本方針の記述順に見られるように,欧文誌に適用する国際的な略記法があったので,日本語雑誌の略記法を定めたように見受けられる。しかし,今回の改訂の基本方針の根底は「雑誌名は正式名称を表記する」ことである。従って,今回の改訂の基本方針は旧基準とは順序を変更し,次のとおりである。

(1)日本語(漢字・かな)の雑誌名を日本語で引用・参照する場合は,略記せず,正式誌名(完全誌名)を用いる。
(2)外国語による雑誌名を外国語で引用・参照する場合は,国際的規格・基準等(ISO 4及びISSNネットワークで利用されている目録マニュアルと略語表)に従って略記してもよい。

3. 基準の名称変更

 旧基準の名称は「雑誌名の略記」であり,機関名を含む日本語雑誌名の略記方法が「4. 和文誌名の略記の方法」に詳説されていた。本基準では,正式名称を略記せずそのまま用いることとしたので,名称を「雑誌名の表記」に変更した。本基準では略記についての旧基準の内容(「4. 和文誌名の略記の方法」等)は削除されているので,旧基準に基づき略記された誌名から正式誌名を復元する際の参考として,旧基準もSISTホームページに掲載している。


4. 適用範囲

 旧基準と同じである。


5. 通則についての補足説明

5.1 引用者による誌名の翻訳の禁止

 雑誌に表示されていない英訳誌名(和文誌名の引用者による独自の英訳等),あるいは欧文誌名を独自に和訳した誌名を雑誌名として表記するような,固有名詞である誌名の引用者による翻訳は当基準制定当初から禁止している。


5.2 複数誌名

 出版者は利用者が独自に略誌名等を作成しないように,必要であれば本誌名に加えて,略誌名等の別誌名を明示的に雑誌に表示すべきである。雑誌に表示されていない訳誌名(和文誌名を引用者が独自に欧訳したり,欧文誌名を独自に和訳したりした誌名)や略名を雑誌名として表記することは,前節で述べたように禁止している。 なお,本基準では日本語誌名については正式誌名(本誌名)のみ,欧文誌については正式誌名と略誌名のみを対象とし,その他の別誌名の扱いは別基準に任せることとした。


5.3 同一誌名の区別

 本基準の適用範囲である参照文献の記述及び二次資料の作成において,同一名称を持つ複数の雑誌の区別方法は異なるため,本基準では区別する方法については特に規定しなかった。なお,下記に区別の一例として,旧基準の「地名の補記」(雑誌名の後に出版地等を丸括弧に入れて補記すること)による方法を記しておく。

例  Natura (Amsterdam)
    Natura (Helsinki)
    Natura (Milano)

6. オンライン雑誌・図書目録(OPAC)の活用

 誌名の変遷等の調査については以下のようなインターネット上で公開されている雑誌・図書目録(OPAC)等が利用できる(参照2006-12-01)。


7. 欧文誌名の略記についての参考情報

 旧基準では略記法について詳説していたが,本基準では「欧文誌名は略記してもよい」としているのであって,略記を推奨するものではない。また,以下に記載するようにISSN国際センターの資料等がインターネット上で閲覧可能であるので,改訂本文では簡潔に典拠資料の記述にとどめた。


7.1 ISSNネットワークで利用される資料

 ISSNネットワークで利用されている目録マニュアル及び略語表の印刷物はISSN国際センターが出版・販売していが,その内容は同センターのホームページにも掲載されている(参照2006-12-01)。


7.2 欧文誌名の略記リストの例

 国内外の学会の投稿規定等においても欧文誌の略記リストが提供されていることがある。これらはISSN方式の略記と同じことが多い。

(1)アメリカ化学会 (ACS)

  • Core Journals Covered in CAplus(http://www.cas.org/sent.html
    収録雑誌の完全誌名と略誌名が併記された誌名リストを掲載(参照2006-12-01)

  • The ACS Style Guide
    第3版(2006)の14章の付録(p. 328-339)には「Chemical Abstracts Service Source Index(CASSI)」での誌名略記リストが転載されている。
(2)米国医学図書館 (NLM)

インターネット上のPubMedサービスの中の「Journals Database」(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=journals)には,完全誌名,ISO形式の略誌名,及びNLM形式の略誌名が併記されている(参照2006-12-01)。



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