科学技術情報流通技術基準

機関名の表記 解説




I. 制定の経緯

 旧基準の基準案策定は1978年,基準制定は1981年である。旧基準の解説によると,当時,基準案のテーマとして「機関名表記の統一」が選ばれた直接の原因は,日本の機関名を欧文表記(主として英文表記)する場合,同一機関が同一に表記されていないという問題があまりにも多く,国際的情報流通の観点から,日本語での表記法を含めてなんらかの基準が必要であるとされたことであった。

 旧基準は1987年に確認されている。また,技術的内容は変更されずに「JIS X 0802(機関名の情報交換用表記方法)」として1989年に日本工業規格(JIS)となり,1995年,2000年,2004年に確認されてきた。

 当初の基準は当時の科学技術庁(現文部科学省)が審議会「科学技術情報流通技術基準検討会」を設置して制定したが,2003年10月に「科学技術情報流通技術基準(SIST)」に関する業務全体が文部科学省から独立行政法人科学技術振興機構(JST)に移管された。

 JSTは移管後の最初の改訂作業として継続検討課題であったSIST 02(参照文献の書き方)の改訂に加えて,JIS化されていた旧基準(SIST 06)及びSIST 05(雑誌名の略記)の改訂に着手した。2001年1月の中央省庁再編,同年4月の独立行政法人の発足等による体制及び機関名の変更が多々あったこと,及び急速に普及したインターネット等の情報通信技術(ICT)の発展により情報環境が急速に広がっていることに対応する必要があった。


II. 本基準の基本方針

 本基準の基本方針は旧基準と変わりなく,次の4点である。

(1)機関名は,当該機関の使用する正式の名称とおりに表記することを原則とし,他の機関名と同じ名称とならないこと,ならびに同一機関は常に同一名称で表記することに留意しなければならない。

(2)日本の機関の和文名称は略記をしない。ただし,一部省略してもよい。

(3)日本の機関が外国語表記名を定めている場合は,原則としてそれを使用するが,その機関が常用する名称も使用してもよい。

(4)外国の機関名は,原資料に記載されているとおりに表記することを原則とするが,国際的な規格・基準等(ISO 4,ISO 832及びISSNネットワークで利用されている目録マニュアルと略語表)に従って略記してもよい。

III. 本基準の主な改訂内容

1. 適用範囲

 適用範囲には,旧基準の書誌参照,二次資料作成に加えて,論文作成も含めた。これは,論文作成時に著者がその所属機関名を明記しなければならないことや,論文中で特定機関について言及する場合を範囲とするためである。

 なお,旧SIST 05「雑誌名の略記」においては,日本語の雑誌名に含まれる機関名の略記方法が規定されていたが,新SIST 05「雑誌名の表記」では日本語の雑誌名の略記は行わないとしたため,それに沿った形で,旧基準(SIST 06「機関名の表記」)での除外事項「なお,雑誌名中における機関名の略記は,SIST 05「雑誌名の略記」によるものとする。」を本基準から削除した。


2. 通則

 旧基準では基本方針の(1)の後半部(他の機関名と同じ名称とならないこと,ならびに同一機関は常に同一名称で表記する)も通則で取り上げていたが,今回の改訂では昨今の知的財産権の意識の高まり等の環境の中で機関名についての自明な本事項をあえて表明する必要はないと考え,削除した。

 日本の機関名のローマ字表記も通則(2)に含まれる。欧文名が当該機関で規定されていない場合は日本語名をローマ字で表記し,固有名詞である機関名を引用者が独自に翻訳してはならない。今日の情報環境ではインターネットを利用して当該機関の英語名を調べるといったことは容易になった。

 外国の機関名のローマ字表記については,旧基準では「6.外国の機関名の表記法」で規定していたが,今回の改訂では通則で規定した。


3. 日本の機関名の表記法

 旧基準の制定後,機関の分割・統廃合,名称変更,中央省庁再編,独立行政法人・国立大学法人等の新設等があったので,関連する規定及び例示を全面的に見直し,改訂した。

 なお、日本の主要企業の社名の変遷についての調査資料としては,結城智里ほか(編)の「企業名変遷要覧」(日外アソシエーツ刊,2006年)がある。


4. 外国の機関名の表記法

 外国の機関名の省略及び略記の典拠となるISSNネットワークで利用されている目録マニュアル及び略語表の印刷物はISSN国際センターが出版・販売しているが,その内容は同センターのホームページにも掲載されている(参照2006-12-01)。


5. 削除された主な項目

5.1 複数機関の表記

 旧基準では,「複数機関の表記」の項で以下のように規定していたが,本基準は書誌要素の一つである機関名そのものの記述方法の基準であるので,旧基準のこれらの規定については削除し,それらを必要とする基準等に委ねることとした。

 <複数機関の表記(旧基準)>
(1)団体著者が複数機関のときは,全機関名を表記することを原則とする。なお,表記に際して紙面の制約等を受ける場合は,先頭にある一機関名を表記し,あとは省略してもよい。
(2)二次資料における著者の所属機関の表記で,原資料に著者の所属機関として,複数の機関名が記されている場合は,その研究等が実際に行われた機関名を表記する。
(3)複数著者のおのおのが,別々の機関に属している場合は,それぞれの著者ごとに,その所属機関名を表記することを原則とする。なお,表記に際して紙面の制約を受ける場合は,その研究等が主として行われた機関名を,不明のときは先頭にある著者の所属機関名を表記し,あとは省略してもよい。

5.2. 同一機関名の区別(地名の補記)

 本基準の対象範囲である論文作成,書誌参照及び二次資料の作成において,同一名称を持つ複数の機関の区別方法は異なるため,本基準では区別する方法については特に規定しなかった。なお,下記に区別の一例として,旧基準の「地名の補記」(機関名の後に所在地等を丸括弧に入れて補記すること)による方法を記しておく。

例1:青山病院(船橋市)
青山病院(呉市)
例2:National Institute of Public Health (Wako, Japan)
National Institute of Public Health (Phnom Penh, Cambodia)



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