科学技術情報流通技術基準
科学技術レポートの様式 解説
- 〔本基準制定の目的と経緯〕
- 科学技術レポートは,学術雑誌とともに,科学技術情報流通のための重要な媒体である。先にSIST 07「学術雑誌の構成とその要素」及びSIST 08「学術論文の構成とその要素」が制定されたのに引続き,科学技術レポートを作成する際に,その編集者及び著者の拠るべき基準を,ここにSIST 09「科学技術レポートの様式」として示した。
- 学術雑誌が比較的長い歴史を持っているのに対し,科学技術レポートはその発生後日が浅く,その流通体制は極め不備である。本基準は,その発行形式と構成要素に関する基本的な事項をとりあげ,レポートによる科学技術情報流体制整備の端緒とすることを目的とした。科学技術レポートの編集者及び著者は,その作成にあたり本基準を役立てて頂きたい。
- 本基準は,昭和59年9月に策定された基準案について見直しを行ったうえ,一部修正したものであり,昭和62年3月に「基準」として制定された。
- なお,2.用語の意味において付記した英語は,参考のためであって基準の一部とはしない。(以下の番号は,本基準中の見出しの番号に対応する。)
- 1. 適用範囲
- 本基準は,主として科学技術レポートを対象とする。しかし,レポートは必ずしも科学技術研究の成果のみならず政府機関,地方自治体あるいは民間における様々な分野の調査研究の報告の役割を担っている。これらのレポートは通常,1冊子1論文の形式で発行されるが,本基準は,それ以外の種々の形式で発行される資料をも考慮して作成したので,これらの資料の著作,編集にあたっても十分適用することができる。
- 2. 用語の意味
- 基準案では,説明すべき用語の配列を五十音順としていたが,関連する用語がばらばらとなり,利用者にとって分かりにくく,不便であるという意見が多かった。そこで,見直しにあたって,検討の結果,この基準に掲載された程度の数(14個)であれば,必ずしも五十音順でなくても十分であるということから,おおむねレポートの構成の順序に従って配列することとした。
- 3. レポートの構成要素とその記載事項
- ここには,1冊子1論文の形式で刊行されるレポートの構成要素とその記載事項を,おおよそその物理的な配列の順序に従って掲げた。レポート全体は,流通に関わる部分と内容に関わる部分に分けることができる。レポートの流通に関わる部分には,表紙,標題紙,ドキュメントシート及び奥付があり,レポートの内容に関わる部分は前部,本体部,後部に分けることができる。
- 記載事項は,その必要度に応じて,必ず記載するもの,該当事項があれば必ず記載するもの及び記載することが望ましいものの3種類に分けることができる。また,記載するかどうかはレポートの作成者にゆだねられる事項については,本来,規定に加える必要のないものであるが,その存在を知らせるという意味で,2〜3のものを「記載してもよい」という表現で加えた。
- 3.1 表紙,3.2 標題紙
- 一般的に,単行書においては,表紙は主として物理的な保護のために付けるものであり,内容に関する詳細な書誌的情報は,標題紙に記載するものと考えられていることが多い。このような観点から,科学技術レポートにおいても,書誌要素の情報源として表紙とは別に標題紙を付けることが望ましい。
- 一方,科学技術レポートは,その性格上,速報性が重視されるという観点もあって,印刷・発行の形式を単行書と比較して,簡略化することが多く,特に,前表紙と標題紙とを共用させる傾向が強い。このような場合には,前表紙及び標題紙に記載すべき事項を併せて記載することが望ましい。
- また,我が国においては,奥付という習慣があるので,標題紙の記載事項の一部を奥付にまわしてもよい。
- 3.1(4) 背表紙の記載事項
- レポートの配架・整理の際に極めて有効であるため,ぜひ記載することが望ましい。背表紙に記載する事項は,縦書き,横書きのいずれによってもよいが,上から下に向かって記載することが望ましい。また,レポートが薄く,背表紙に記載できないときは,表紙の背に近い部分に記載することが望ましい。
- 3.3 ドキュメントシート
- 我が国においては,これまで,レポートにドキュメントシートを付ける習慣がなかったが,レポートに関する情報をこのような一覧表の形で示すことは,情報流通の円滑化のために極めて有効であるので,必ず付けてもらいたい。ドキュメントシートは,標題紙の次に置くこととした。ISO 5966 Documentation-Presentation of scientific and technical reportsでは,ドキュメントシートをレポートの末尾部分に置くことを規定しており,ANSI/NISO Z39.18 American National Standard for guidelines for format and production of scientific and technical reportsでは,これを表紙の直後,標題紙の前に置くように規定している。本基準においては,ドキュメントシートの重要性とその扱いの便利さを考慮し,これを標題紙の次に置くこととした。
ドキュメントシートの様式の標準的な例を付図3に示した。この様式に準拠して各自作成することが望ましい。記入はできるだけ手書きではなく,活字等によることが望ましい。該当する事項のない欄は空白のままでよい。
また,レポート作成機関において,情報流通上有効な項目を最小限追加してもよい。
- 4.1 レポート番号
- レポート番号は,レポートを識別するための最も有効な手段である。レポートによる情報流通を円滑に行うため,レポート番号を必ず記載することとした。本節の規定は,レポートの国際的な流通を考慮し,ANSI Z39.23 American National Standard for library and information science and related publishing practices-Standard technical report number(STRN)-format and creationの規定に従った。
- 4.1.2 レポート番号の付与
- レポート番号は,その作成機関が本項の規定に従って付与する。また,レポートによる情報流通を円滑に行うため,これを一元的に扱う機関が国内に設置されることが望ましく,この機関が,流通のための番号を別途付与することも非常に有効である。このような機関が設置されることは,本基準制定とともに,科学技術情報流通上極めて重要であることを強調したい。
また,レポートの作成・編集機関において,自機関内での利用の便を図るために,レポート番号に続けて,レポートの公開の形態,主題,使用言語,所蔵先あるいは媒体などを示す記号を付加することがあるが,これは,あくまで内部の問題であり,一般の流通には直接関係ないと考えられるので,この基準では触れなかった。
- 4.2 レポート名
- 同一機関から多数のレポートが順次発行される場合,個々のレポートの標題とは別に,レポート全体を表す総称を持っていることがある。特に,我が国においてはその例が多い。これらの総称は,レポート名としてレポートの識別のために引用され,また,目録などに収録されることがある。したがって,レポートがレポート名を持っているときは,それを表紙その他に明確に表示することが望ましい。また,そのレポート名は,一定でなければならない。
- 4.7 関連機関名とその所在地
- 政府関係機関,地方自治体等から発行されるレポートには,様々な形態で実施された調査・研究の成果をまとめたものが多い。すなわち,委託調査,助成研究,共同研究,総合研究等があり,資金を負担した機関と実際に調査・研究を実施した機関が異なっている場合が極めて多い。
一方,実際に発行されるレポートには,委託機関,助成機関,実施機関など,レポートの作成,発行に関連した機関が明記されていることが少なく,しばしば,レポートの整理,流通に支障をきたしている。
以上の観点から,発行するレポートの表紙,標題紙,ドキュメントシート等に,これらの関連機関の名称と役割を明記することが望ましい。
- 4.13 機密保護の指定
- レポートが当初,配布制限又は機密保護区分の指定があり,後にそれが解除又は緩和されたものである場合は,レポートにその経過を記載することが望ましい。
- 4.15,5.3 分類記号
- 国際的に広く通用する分類記号の一例に,UDC(国際十進分類法)がある。また,NDC(日本十進分類法)は,国立国会図書館作成のデータベース(ジャパンマーク)に収録される国内で発行されたレポートを利用するのに便利であるから,これに付与されたNDCの分類記号が明らかな場合,これをレポートに表示することが望ましい。
- 4.16 注記
- レポートには,研究実施にあたって付けられる研究番号,契約番号あるいは収集機関によって付けられる受け入れ番号等種々の番号が付けられることがあるが,我が国においては,これらの取り扱いが確立しているとはいえないので,本基準では独立した記載事項とはせず,注記欄に示すようにした。
- 5.7.2 見出しの番号付け
- 見出しにおける,章を表す一桁の数字の後のピリオドについて,ISO規格とJIS規格とで扱いが異なっている。すなわち,ISO 2145 Documentation-Numbering of division and subdivision in written documentsではピリオドは付けず(例:第1章→1),JIS Z 8301「規格票の様式」では,ピリオドを付けている(例:第1章→1.)。
SIST 09(案)では,ISO規格に準じて,ピリオドを付けないこととしていたが,今回の見直しにあたって,国家規格であるJISとの整合性を考慮し,JISに準拠して,ピリオドを付けることとした。
- 6. 1冊子1論文以外の形式によるレポート及び同一テーマで発行される一連のレポートの構成要素と記載事項及び記載要領の留意事項
- 本基準は原則として1冊子1論文の形式のレポートを対象としているが,本章では,それ以外の種々の形式のレポート,例えば,会議報告論文集,プロジェクト研究の報告集のように,1冊のレポートに複数の論文が収録されて発行される場合及び一連のレポートが順次発行される場合等について規定した。
- 6.1.1 1冊子多論文のレポート
- 論文の流通を円滑に行うという観点からは,1冊子多論文のレポートは,個々の論文の所在が不明確となり,その論文への到達が困難になるおそれがあるので,できるだけ避けることが望ましい。やむを得ず,このような形式のレポートを作成する場合には,個々の論文を独立した論文として扱うことができるように,6.1.1で規定する他,目次等の要素を付けることが望ましい。
- 6.1.1(5)
- 総合研究等においては,読者がその研究を理解,評価するためにプロジェクトリーダー等が,当該レポートの対象となった研究全体を概観したまとめの論文を作成し,全体の始め又は最後の部分に付けることが,極めて望ましい。
- 〔その他〕
- 本基準では規定しなかったが,レポートの大きさはJIS P 0138「紙加工仕上寸法」で規定されている寸法のものとし,できるだけ,A4判又はB5判とすることが望ましい。
- 対応国際規格
- ISO 5966 Documentation-Presentation of scientific and technical reports
- 関連基準・規格
- SIST 01 抄録作成
- SIST 02 参照文献の書き方
- SIST 06 機関名の表記
- SIST 07 学術雑誌の構成とその要素
- SIST 08 学術論文の構成とその要素
- JIS P 0138 紙加工仕上寸法
- JIS Z 8201 数学記号
- JIS Z 8202 2 量記号,単位記号及び化学記号
- JIS Z 8203 国際単位系(SI)及びその使い方
- JIS Z 8301 規格票の様式
- ANSI Z 39.18 Information sciences-scientific and technical reports-organization,preparation,and production
- ANSI/NISO Z 39.23 Standard technical report number(STRN)−format and creation