科学技術情報流通技術基準

索引作成 解説





[本基準制定の主旨]

 わが国では,学術出版物でありながら,索引の不備なものが多く,中には全く欠くものさえまれでない。せっかくの大著が索引の整備されていないために十分活用されていないことは残念なことであり,著者や編集者は利用者の身になって,最適な索引を備えることが望まれる。
 本基準は,学術出版物の著者や編集者が索引を作成する際に留意すべき基本的事項と作成の指針を示すものである。索引作成に当たって,著者自身,あるいは編集者自身が作業を直接担当しない場合もこの基準に照らして,索引を計画し,また索引作成者を指導し,調整されるように希望する。
 本基準では,索引作成に高度の厳密さを要求しなかった。索引の作成をあきらめたり,ためらったりすることのないように,誰でもできる建前で,最低限必要なことを掲げ,作成に際して助言になると考えられる事項を付加した。



1. 適用範囲

 索引には,一資料の内容索引と多数の資料の書誌索引がある。前者は一資料が多数の情報の集合と見て,その情報を単位として,索引を作成するものである。単行書(多数の執筆者が分担執筆するハンドブックなどを含む)や論文集(学会の会議録などを含む)などの索引が該当し,単一逐次刊行物の一定期間の総索引は考えようによっては含められる。後者は多数の雑誌を対象とする論文記事索引に代表される,論文記事単位の書誌作成である。
 科学技術分野では,雑誌論文の流通・利用の円滑化を図ることが重視されるが,情報の生産者である研究者やその情報の流通を図る学術刊行物の編集者の参照する範囲は前者であり,後者は『科学技術文献速報』を編集・刊行する日本科学技術情報センター(JICST)や『医学中央雑誌』を編集・刊行する同刊行会のように書誌作成の専門機関の業務に属するので,本基準案には含めることを避けた。ただし,解説では,若干触れて,説明する。
 また,本基準案では印刷形態の索引を対象とし,今後普及が予想される電子媒体については,次のように考えられる。
 索引作成とコンピュータの関わりは,相当古い歴史をもっている。今日の二次情報データベース興隆の発端は,アメリカの化学会の一部門であるChemical Abstracts Service(CAS)が,その抄録誌Chemical Abstracts(CA)の巻末索引の作成にコンピュータの導入を計画したことに始まる(1959年頃)。当時のCASでは1年分のCAの巻末索引を作成するのに,ほとんど2年かかるという状況であった。そこで索引作成作業の効率をあげるための手助けとしてコンピュータの利用を始めたのである。このようにして始まったコンピュータの利用は,索引作成の手助けというレベルを超えて広く印刷用の電算写植システムへと発展・普及し,様々な出版物の作成に使われ始めた。このころの主要メディアは印刷物であり,印刷物の編集や組版の工程におけるコンピュータの利用の一環として,索引作成にもコンピュータが利用されるという形態が定着していった。特に索引データの並べ替えなどにおいては,コンピュータはその力を遺憾なく発揮した。ここに,コンピュータ組み版などの過程で副産物として作成されたコンピュータ可読ファイル内に収められた索引データは,印刷体の索引と同じものの単なるコンピュータ可読体として普及することとなった。
 編集・出版の過程におけるコンピュータの利用とは少し趣を異にするが,索引の質をよくするための手助けにコンピュータを利用するということも当初より行われている。この場合のコンピュータの主な役割は,著者や物の名前あるいは術語などの記述を統一するための典拠機能を提供することである。特に,二次情報誌の作製などでは,各種の大規模な典拠ファイルが作られ索引の品質の維持に貫献している。
 パーソナル・コンピュータ(PC)の普及に伴い,最近では,PC用のワードプロセッサーで,索引作成用のモジュールを装備したものが市販されている。索引に採りたい単語を指定すれば,それらを集めて索引を作ってくれるというものである。また,KWIC索引などを簡単に作るソフトウエアなどもある。しかし,これらは今のところ,汎用コンピュータの場合と同じく,索引作業の手助けをするものという段階でとどまっている。
 コンピュータ可読データによる情報の流通が普及したことで,コンピュータ可読テキストから語句を抽出して,人手を介さず索引を作成しようという研究が世界各地で行われ,また,それらについての議論も盛んである。人工知能(AI)技術の成果なども取り入れ,用語の選別・置き換えなどの,本来インデクサーによって行われる知的活動も含め自動化しようという試みであるが,今のところまだ,満足できるような結果は得られておらず,今後の展開に期待がかかっている。
 オンラインデータベース・サービス・システムでは,項目単位あるいは複数項目を統合・編集して作った「索引」と呼ばれるものを利用して検索を行う仕組みになっている。ここでいう「索引」とは,サービス用のシステムと一体となったもので,「検索」という機能を,本基準の対象している索引とは異なる方法で提供しているものである。つまり,抄録誌などのコンピュータ可読ファイルに用意されている著者や索引項目などを「索引」に登録して検索に用いることはいうに及ばず,標題や抄録中の文章などからほとんど無条件に単語を抽出(ストップワードは除く)し,同様にこの「索引」に登録して「検索」能力の性能向上を実現しているのである。
 特に,近年,この種のサービス・システムで提供が開始された全文データベースでは,抄録誌の機械可読データなどの「検索」で培われた手法をさらに拡張して,コンピュータ可読テキストの文章中からもほとんどの単語を抽出して「索引」に登録し,「検索」できるようにしている。テキスト中のほとんど全ての語句を使って検索できるわけであるから,わざわざ手間をかけて索引語を選ぶ必要はないという立場である。将来,出版のコンピュータ可読化が更に普及し,電子的な出版が主流になり,コンピュータ可読テキストというよりは「電子文献」ともいうべきものが「学術出版物」の大半を占めるようになるとすると,索引そのものが不要ということになるということかもしれない。



2. 用語の意味

 本基準で使用している基本用語に関して,ISOなどの関連規格及び図書館・情報学の用語集,ハンドブックを参考にして,その意味を定義した。(1)〜(11)は,索引に関する最も基本となる用語を定義した。次の(12)〜(19)は索引の種類に関するもの,(20)〜(26)は用語の選定及び配列などに関する用語を,そして(27)〜(31)では索引作成対象となる資料に関する用語をそれぞれまとめた。関連する用語の定義がまとまって見られるように,五十音順ではなく,グループごとにまとめ,それぞれの中を本基準で言及された順序で配列した。



3. 索引の機能及び構成

3.1 索引の機能

 索引の基本的機能は情報の所在発見にあり,情報そのものの提示は行わないのであるが,見出しに一定の情報を付記することはある。例えば,英訳,人名の原綴,生没年,国籍,物質名の化学式などを付記し,同形異義語を識別する以上の便宜を与えている場合である。これらは本来の索引の機能ではなく,索引に付加価値を添えて一種の簡単な事典に拡張したものである(参照4.2.2)。



3.2 索引の必要な資料

 索引を必要としない資料には,本文の冒頭から読むべき資料(例:フィクション)があるが,科学技術関係では不必要なので,触れなかった。なお,この種の資料には要語索引(concordance)を作成することがある。
 辞典や事典のように本文が見出しの五十音順又はアルファベット順に編成されている資料も本文と配列を同じくする索引は有効でないので,通常作成しない。ただし,見出しの一覧を目次として表示することがあり,また,各項目内から索引項目を追加して索引を付することもあるし,本文の配列順序と異なる体系順索引を付加することもある。各見出しの外国語訳などは配列順序が異なることが多く,個別に索引を必要とすることがある。



3.6 索引の種類

 「適用範囲」で指摘したように,本基準は多数の資料を対象とした索引ではなく,原則として一資料を対象とした索引を想定しており,本節においても,その範囲での種類を提示するにとどめた。
 なお,複数の雑誌を対象とした索引は通常書誌索引と呼ばれ,論文・記事単位で所在指示を行う。検索の手がかりとして論文・記事の主題を用いる「主題索引」,記事・論文の著者名を用いる「著者名索引」が一般に作成される。また,学術論文の特性を活かして,論文に付された引用文献(の書誌データ)を検索の手がかりとする「引用索引(citation index)」を作成することもある。
 書誌索引は,所在指示に論文・記事の書誌データを用いるため,一貫した書誌記述を採用しなければならない。例えば,「SIST 02 参照文献の書き方」などを参考にすることも可能である。また,主題索引の作成にあたっては,見出しに採用する用語のばらつきを避け,同一概念を一つの見出しで表すために,シソーラス及び件名標目表などを採用することが望まれる。



4. 見出し

4.1 見出しの選定

 どの語を見出しとして選ぶかは,恐らく索引作成の最も重要な作業であるが,基準としては,結果として作成された索引が満たすべき要件を挙げるのが第一と考え,実際の見出しの選定過程は取り扱わなかった。



4.2.1 見出しの種類

 学協会の機関誌などの逐次刊行物(一学会で情報誌,展望誌,論文誌などを分けて刊行している場合,例えば電子通信学会誌と電子通信学会論文誌A〜Dの場合は,それら各誌を併せて取り扱ってもよい)について,一定期間(例えば,第1巻から10巻)の掲載論文記事を収録対象とする,いわゆる,一雑誌の総索引においては, 主題索引と共に,寄稿者(主会員)の業績を明らかにする目的から,著者名索引が重視される。通常,その著者名索引では,著者名に論文記事の標題を付記したものを見出しとし,主題索引では,主題を表す語の後に,著者名を副見出しのように付記して見出しとする。

例1:
著者名索引の場合(著者名と標題で見出しを構成)
石川嘉彦:テレビジョン同期放送方式   70:918-920
磯野春雄:ディスプレイのシャープネス
       客観評価システム       70D:474-481

例2:
主題索引の場合(主題を表す語が主見出し,著者名が副見出し)
テレビジョン
  石川嘉彦  70:918-920
  磯野春雄  70D:474-481
  小林壽雄  70B:1009-1016




4.2.2 本文中の表記の尊重

 本基準の範囲内での索引作成においては,著者が使用している用語に従って,見出しを選定する。個人著作の場合,シソーラスあるいは件名標目表などの典拠リストを利用して著者の用語を優先語に置き換えて見出しとすると,指示されたページにおいてその見出しを見つけることができないなど利用者を混乱させることにもなりかねないので,推奨できない。優先語又は一般によく使われる語については,必要に応じて,著者の用語への「を見よ」参照を行うとよい。



4.2.3 同義語の取り扱い

 本基準においては本文中の用語を尊重することを原則としているので,同一の主題に対して複数の異なる用語が使われている場合でも,それら同義語を一つの索引見出しに統制するのではなく,それぞれの用語を索引見出しとする方法を推奨している。
 ただし,索引対象とする資料の性格や,索引の目的によっては,何らかの形で同義語を統制する方がより効果的である場合も考えられる。特に,逐次刊行物を対象とした索引など,継続的性格を持つ場合には統制した方が望ましい場合もあるので,その場合については(2)で規定した。



4.2.7 欧文見出しの形式

 欧文見出しの表記に関しては,本文条項で規定した大文字・小文字の使用法以外にも,単数形と複数形の扱いが問題になることがある。しかし,日本において主として本文が日本語である資料を対象として索引を作成する場合には,欧文見出しの数自体が少なく,詳細な規定がなくても支障がないと考え,条文では規定しなかった。必要ならば,ISO 999の規則に準拠することが望ましい。ISOにおいては,単数形と複数形によって意味が異なる場合を除いて,どちらかの形式に統一するように規定してある。単数形と複数形どちらを選択するかについては,言語(英語,フランス語,ドイツ語),及び分野によって慣習が異なるので,それらの慣習にしたがって一貫した方針で統一することが望ましい。



4.4.4 標 題

 書誌記述に関するSISTの規定においては,標題を記号で囲ったり,字体を変えるようには規定されていない。しかし,索引においては,標題が,主題を示す語・人名・地名などの見出しと混在することが通常であるため,何らかの形で標題であることを区別することが必要であり,利用者にとって便利である。ISOをはじめとする他の関連規格においても,欧文標題はイタリック体にするか下線を引くと規定されている。本基準においては,区別ができればどのような記号を使うかについては,索引作成者の任意としている。通常使われる方法としては以下の方法がある。
 単行書及び逐次刊行物の場合,和文なら二重かぎ括弧でくくり,欧文ならイタリック体とするか下線を引く。論文の場合は,引用符でくくる。

[例](単行書の標題)
『化学便覧』
Concise Encyclopedia of Chemical Technology
(論文の標題)
“化学者の言葉”
“Origin of cosmic rays”

 また必要に応じて,著者名,出版地,出版年を限定詞として付記する例は以下の通りである。

[例]
『実験計画法』(朝木善次郎)
Physical Chemistry (Barrow, G.M.)
Natura(Amsterdam)
Natura(Milano)
『全国公共用水域水質年鑑』(1987/1988)



5. 所在指示

 所在指示には,ぺージ番号が用いられる場合が多いので,ここではその方法を中心に,所在指示の仕方を規定している。



6. 相互参照

 「を見よ」参照は,利用者に参照先の見出しにおいてその求める情報の所在を確かめる手数を強いるので,本基準の範囲では,なければないにこしたことはない。ただし,6.2(2)の場合は,一つの「を見よ」参照を設定することにより,多数の索引項目の重複を回避することができるので「を見よ」参照の効果が大きく,是非活用することが望ましい。
 「をも見よ」参照については,冊子形態の資料では,当該見出しによって導かれる本文内,若しくはその前後で見いだされる事項やその索引中で当該見出しの前後で見いだされる事項にまで厳密に適用する必要はない。本文及び索引において,著しく離れた位置に存在する関連見出しに限定する方が効率的であり,推奨される。

例1:
本文中,Aにはa1,a2,...anの種類があることが記述され,次にa1からanまでの個別的記述がある場合
 索引の見出しAのもとに,a1,a2,...anを「をも見よ」参照として挙げる必要はない。

例2:
ある著作にα,β,γ,...の物質の解説があり,別の章で特異な条件のもとにα,β,γ,...の示す性質がそれぞれ見出しα',β',γ'...のように記述されている場合
 α及びα',β及びβ',γ及びγ'...が索引の配列上,隣接して出現するならば,αにα',βにβ',γにγ'を「をも見よ」参照として挙げる必要はない。




7. 配 列

 見出しの配列法は,索引の使いやすさを直接左右するものであるとの認識のもとに,使いやすくするために考慮すべき原則を,なるべく具体的に挙げた。その結果,やや細かくなりすぎたきらいもあるが,むしろこの方が,実際に索引を作る人が参照する際の役に立つと考えている。



7.2 五十音順配列

 五十音順配列は,和文索引において最も広く行われている配列方式である。五十音順配列と称されるものには,大きく分けて,「国語辞典配列」と「百科事典配列」の2種類がある。どちらも見出しの「読み」に基づいた字順配列であるが,大きな違いは,長音の扱いである。長音のある場合に,直前の文字の母音を長音において繰り返すのが「国語辞典配列」,長音を無視するのが「百科事典配列」と呼んで大過ないと思われる。本基準では,後者の「百科事典配列」により,五十音順配列を記述した。これは,一般的な用語辞典,百科事典,索引類のほとんどが「百科事典配列」を採用しているからである。
(2)(d)五十音順配列では,同じ読みをもつ見出しが複数ある場合の処理について,一般的な規則と考えられるようなものは必ずしも明らかではない。ここでは,一般的な用語辞典,百科事典の索引などに比較的共通してみられる方法を中心に,見出しの基本的な配列を補足する。
 具体的には,下記のような方法が考えられる。

・長音記号のないもの,長音記号のあるものの順とする。

例:
匙(さじ)
サージ

・括弧記号のないもの,括弧記号のあるものの順とする。

例:
自然
『自然』(雑誌)

・清音,拗音,促音,濁音,半濁音の順とする。

例:
ハス
バス
パス
不安(ふあん)
ファン

以上のような方法でも同一配列順位となる場合の配列は,以下のような方法が考えられる。

・片仮名,平仮名,漢字の順とする。数字とローマ字表記の見出しは,片仮名の前若しくは漢字の後とする。

例:
コウジ(柑橘類)
こうじ(麹)
高次(数学)

・同一読みの漢字は画数順とする。

例:
公差
交叉
光差
黄砂
較差

(2)(g)欧文索引項目の数が極端に少ない場合は,本文の規定にとらわれず,欧文見出しの日本語読みに基づいて,五十音順に配列してもよい。

例:
不要語
不要語集
Bradford's law
フリーインデクシング
フリーキーワード

 漢字表記を行う東アジアの人名,地名の配列についても,少し補足しておくと,この場合は,原則として現地読みによることが望ましい。特に,大韓民国,朝鮮民主主義人民共和国については,現地読みに努めることが要請される。

例:
李鍾範  リーションバム
李弼烈  イーピルリョル
陳国彦  チェンクオイエン
丁文紅  チンウェンシャン
京畿道  キョンギド
大田   テーデン
長春   チャンチュン
黄河   ホワンホー

 現地読みするときは,見出しを片仮名表記するか,ルビ又は限定詞として片仮名表記を補うことが望ましい。ただし,現地読みが明らかでないときは,日本語読みとし,その旨を索引の凡例に記載してもよいだろう。



8. 印刷物としての様式

 ここには,索引を印刷物とする際の注意事項をまとめた。一般に索引のレイアウトは,その対象となった資料の特性及びレイアウトに依存するものであり,この基準により形式を画一化することを目的としているわけではない。




関連基準・規格:

SIST 06    機関名の表記

ISO 999    Documentation Index of a publication

ANSI Z 39.4  American National Standard for Library and Information Sciences and Related Publishing Practices-Basic Criteria for Indexes

BS 3700    British Standard Recommendations for Preparing Indexes to Books, Periodicals and Other Documents



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