科学技術情報流通技術基準

電子投稿規定作成のためのガイドライン

Guidelines for Electronic Contribution Rules





 
1. 適用範囲
    このガイドラインは,学協会や出版社などが学術雑誌などの電子投稿規定を作成する際の指針を与えるものである。ここで,電子投稿とは,多様な電子出版物(印刷物,CD-ROM,World Wide Web(WWW)など)に対応できる電子原稿による投稿をいう。



 
2. 用語の意味
この基準に用いる主な用語の意味は,次のとおりとする。
(1) 電子原稿(electronic manuscript)
 著者が学術雑誌などに投稿する目的で電子媒体上に作成した原稿。このガイドラインでは,多様な電子出版物に対応できるよう一定の形式で作成されたものを指す。そのため,電子原稿の表現形式(レイアウトや内部形式)は,電子出版物(印刷物,CD-ROM,WWWなど)のそれとは通常異なるものとなる。
   (2) 電子投稿(electronic contribution)
 通常は,電子媒体による投稿全般を指すが,本ガイドラインでは多様な電子出版物(印刷物,CD-ROM,WWW など)に対応できることを主眼とする。
(3) 電子出版(electronic publishing)
 このガイドラインでは,電子原稿を元として学協会や出版社などの外部に多様な電子出版物として公にするまでの一連の流れをいう。
 ただし,本ガイドラインにおける成果物の配布手段としては,WWWのようにネットワークを使用する場合のみを示す。
(4) 電子出版物(electronic publication)
 電子出版により作られ,外部に公開される多様な最終成果物。たとえば,印刷物,CD-ROM,WWW用のデータ,ファイル,データベースなどがある。



 
3. 電子投稿の意義と電子出版の流れ
3.1 電子投稿の意義
 科学技術情報の流通・利用形態に大きな変化が生じつつある。また,著者も原稿を投稿(作成)する時点で電子化している。このような環境の中で電子投稿を行う意義を以下に述べる。
(1) 多様な電子出版物(印刷物,CD-ROM,WWWなど)に対応できる。
(2) より早く情報が公開できる(出版物でも印刷期間の短縮で掲載が早くなる)。
(3) 従来は不可能であった情報も公開できる。たとえば,音声,動画像,プログラム,実験ないし測定データなど。
(4) 出版物の発行費が低減できるので,投稿料の値下げも可能になる。
(5) 原稿の再入力が不要となるため,再入力ミスが減少する。
(6) データの蓄積ができ,情報の再利用や有効利用ができる。
(7) 書誌データだけでなく,本文もデータ項目ごとに分かれているため,タグをキーとしてきめの細かい検索ができ,ヒット率が高まる。
(8) 共通のデータベースに登録することにより,より利用価値が高まる。
(9) 電子投稿,電子出版に積極的に取り組み,データベースを公開することにより,国際協力への貢献もでき,学協会や出版社の評価が高まる。
 
3.2 電子出版の流れ
 このガイドラインにおける電子出版の工程は,SGML(Standard Generalized Markup Language)あるいはXML(eXtensible Markup Language)を利用した方式(以下「SGML/XMLを利用した方式」と略)で行うことを想定している。この方式は,
(1) 文書を構成するデータ項目を明示して処理を行うことによって,
(2) 多様な電子出版物を効率的に作る方法で,欧米では広く使用されている。
 また,このガイドラインでは電子出版の流れに多様な形態が存在しうることを示し,その流れをシステム化した実例は参考2に紹介する。学協会や出版社などは個々の事情に適合した形態を選択できるが,どの流れを採用するかによって電子投稿規定も異なったものになる。
 
3.2.1 電子出版の構成
 電子投稿による電子出版の工程は,電子原稿の作成,電子投稿,論文審査,電子出版処理,著者校正,電子出版物の配布の6つに大別される。図1に電子出版全体の流れを示す。なお,図1は原稿作成から電子出版物の配布までの作業の流れを示したものであって,データの流れを示すものではない。

図1 電子出版全体の流れ

 
3.2.2 電子原稿の作成
 電子原稿の作成とは,後に行われる電子出版処理に使用される原稿を著者が作ることである。「SGML/XMLを利用した方式」では,電子原稿の上でデータ項目を明示する。その理由は,著者の情報環境と電子出版処理のそれとの相違を,データ項目の明示によって吸収し,効率的に接続するためである。明示の仕方によって,後に行う電子出版処理の仕方と手間が変わってくる。しかし,著者の情報環境が人によって異なることを考えれば,後の処理の都合もさることながら,著者にとって使いやすい方法であることが重要である。具体的な方法は,4. 電子原稿の作成方法のところで述べる。
 
3.2.3 電子投稿
 電子投稿にはフロッピーディスクなどによるものと電子メール,FTPなどが考えられる。ただし,現時点では写真やカラー図などは現物の方が望ましい場合が多く,インターネット用を除けば完全な電子投稿は少ないと考えられる。また,論文審査が紙媒体で行われる場合は,まず紙に出力した原稿を投稿し,論文審査後,初めて電子投稿することになる。
 
3.2.4 論文審査
 論文審査には,紙媒体で行う場合と電子媒体で行う場合の2通りが考えられる。電子媒体で論文審査を行うには,審査員にも著者と同じコンピュータ環境が必要なので,現時点ではインターネット用を除けば紙媒体の方が一般的で,簡便でもある。また,審査のときに原稿にタグが付いているという状況は避けるべきであるし,プレインテキストやテンプレート方式の場合も,ワープロ文書に変換して審査者が読み見やすいハードコピーで行うべきであろう。
 
3.2.5 電子出版処理
(1) 前処理
 これは,電子原稿のフォーマットから電子出版物作成処理で使用するフォーマットへの変換処理である。著者が電子原稿を作成する環境と,電子出版物を作成する環境とは異なることが多い。そのため,両者のフォーマットも異なることが多く,この変換処理が必要になる。また,この前処理があるため,著者は電子出版物作成処理を意識せずに,著者の環境で電子原稿を作ることができる。なお,両フォーマットが同一の場合は,前処理は不要になる。
 変換処理の仕方は,両フォーマットの相違の程度により異なる。また,電子原稿がフォーマット上正確に作成されていれば,自動変換で済むが,不正確な場合はその程度によって手作業が必要になることがある。学協会や出版社などは,スタイルファイルを用意するなど,著者が正確なフォーマットの電子原稿を作れるように配慮することが望ましい。
(2) 電子出版物の作成
 「SGML/XMLを利用した方式」で,たとえば,印刷物,CD-ROM,WWW,PDF(Portable Document Format),データベースなどを作成する。どれを作成するか,中に納めるデータ項目を何にするかは学協会や出版社などの方針による。ここで,「SGML/XMLを利用した方式」とは,
(a) SGML/XMLに基づいた文書データベース(以下,SGML/XML方式文書DBと略す)を作り,それから各種電子出版物を作成する方式,あるいは,
(b) 最も急ぐ必要がある電子出版物(たとえば,WWW版あるいは印刷版)を始めに作成し,その後,あるいはそれと並行してSGML/XML方式文書DBを作って,各種電子出版物を作成する方式とする。
 電子出版物作成処理で用いるソフトウェアは,SGML/XMLに対応したものでも良いし,SGML/XML方式文書DBと同等の別フォーマットを用い,必要なときにSGML/XML方式文書DBを出力して他の電子出版サブシステムと連携する機能を持つものでも良い。
 なお,電子出版物の作成にあたっては,電子情報交換を円滑に行うために,電子出版物に収録される各論文にPII(Publisher Item Identifier)などの一義的な論文識別子を付与することが望ましい。
 
3.2.6 著者校正
 著者校正を電子的に行うことも考えられるが,当面は現状のように紙で行うことが簡便で確実と考えられる。なお,著者が作成した電子原稿を用いているため,従来の方式に比べると著者校正の必要性は低い。
 
3.2.7 電子出版物の配布
 HTMLやPDFなどのフォーマットを用いてネットワークを介した配布が考えられる。この種の電子出版物の配布に際しては,著作権に関する配慮が肝要である。著作権については国内法規や国際条約などを踏まえる必要がある。電子出版物の配布に関連して電子投稿規定が影響を受ける可能性がある。
 なお,最近では,電子原稿を著者自らがネットワークを通じて配布(公開)することが増えている。電子投稿規定においては,電子原稿の著作権の帰属先を明記することをはじめ,電子原稿を著者が配布することの可否,配布可能な場合は内容改変の可否や出典表示の要不要,配布可能な時期・期間等についても言及することを検討する必要がある。また,CD-ROMなどのネットワーク以外の電子媒体,および印刷物などの電子媒体以外の媒体での配布や転載についても言及することを検討する必要がある。
 電子出版物の配布は,学協会や出版社などが自ら行う場合の他に,適当な機関に委託して行うことも考えられる。委託して行う場合は,データ項目,検索表示機能,サービスの対象者,利用料金,実施期間などを学協会・出版社等と委託先との間でよく協議して決める必要がある。また,特定機関を対象とするデータベースの提供も考えられる。この場合も,データ項目,料金,提供期間などを学協会・出版社等と委託先との間でよく協議して決める必要がある。



 
4. 電子原稿の作成方法
    学協会や出版社などが,著者に電子投稿を求める場合,著者は学協会や出版社などが用意した電子投稿規定に従って,指定されたワードプロセッシング・ソフトウェア(以下,ワープロソフトと略記)ないしDTPソフトウェアあるいはエディタを使い,原稿を構成するデータ項目を書いて,電子原稿を作成することになる。
 そのため,学協会や出版社などは電子投稿規定において,データ項目を明示し,著者が使用するソフトウェアでのデータ項目の書き方を示す必要がある。書き方は,ソフトウェアがスタイル機能を持つか否か,そのソフトウェアが何かなどによって異なってくる。
 そこで本ガイドラインでは,4.1にデータ項目について,4.2にスタイル機能付きソフトウェアの場合の書き方,4.3にスタイル機能を持たない場合の書き方を述べる。
 スタイル機能付きソフトウェアの方が,著者にも刷り上がりのイメージに近いものが得られ,分かりやすいというメリットがある。もっとも,学協会や出版社などは,特定のソフトウェアを指定することによって著者が不利とならないように,たとえば,その分野で広く使用されているソフトウェアを採用する,あるいは使用可能なソフトウェアを複数指定するなどの配慮をすることが望ましい。また,電子原稿がどのような電子出版物になるか,たとえば,印刷物,CD-ROM版,WWW版の例などを挙げ,電子原稿と電子出版物とはレイアウトが異なることを示すことが望ましい。
 
4.1 データ項目と項目間の関係
 本ガイドラインでは,電子原稿に取り入れるべき基本的なデータ項目と項目間の関係を4.1.2に示すが,これらは,雑誌論文(解説も含む)の文書構造を記述したSGML方式による文書構造定義:DTD(文書型定義)A)からD)の中から基本的なデータ項目と考えられるものを,項目間の関係も含めて採ったものである。そこにはSIST08で示された項目も含まれている。各学協会や出版社などは必要に応じて,データ項目を取捨選択あるいは追加できる。
A) 雑誌論文の構造に関するISO規格(ISO 12083 1994年制定)
 元は米国出版協会が作成した規格であり,ISOになった後,JIS(JIS X 0804 1996年制定)にもなっている。
B) 学術論文用DTD(国立情報学研究所 1999年)
 学術全分野の論文を想定して作成された。前身の「学術論文用汎用DTD」は95年から実際に使用されている。
C) 科学技術論文用DTD(科学技術振興事業団 1997年)
 科学技術分野の論文を想定して作成された。初期バージョンは1996年から実際に使用されている。
D) 化学論文用DTD(日本化学会 1992年)
 アメリカ化学会で考案されたものを元に作成された。1993年から実際に使用されている。
 
4.1.1 データ項目
 電子原稿のデータ項目とは,論文タイトル,著者名,抄録などの文献情報だけでなく,章節のタイトル,段落,図,表,数式,参照文献等々,原稿を構成するすべてのデータ項目である。序論,理論,実験,結果,考察などといった内容を示す構成要素ではなく,形式上の構成要素であるため,データ項目という。なお,データ項目の観点からは,序論,理論,実験など内容を示す事項は,章や節のタイトルに反映されると想定している。
 
4.1.2 データ項目間の関係
 章,節,段落といった階層関係,論文タイトルに始まり,本文,参照文献リスト,付録などと並ぶ前後関係,本文から図,表,文献を参照する参照関係などがある。なお,参照される図や表は印刷物では参照元から近い位置にレイアウトされるが,原稿としては本文の後にまとめて置く方式でよい。一方,数式は原稿の場合にも本文中に埋め込む方式でもよいし,あるいは本文中には参照のみ置き,数式自体は後にまとめて置く方式でもよい。以下に,電子原稿に収めるべき基本的データ項目を記す。ここでの字下げは階層関係を意味している(データ項目の詳細については参考3参照)。

図2 基本的データ項目

 
4.2 スタイル機能付きワープロの場合
 4.1に述べたデータ項目を並べた電子原稿を投稿規定に沿って著者に書いてもらうのは難しい。そこで,各データ項目にフォントなどの書式データが設定されたスタイルファイルを利用し,スタイル機能付きワープロを使って電子原稿を作成するのが便利である。こうすれば,著者は投稿規定をさほど気にすることなく,各データ項目を区別した電子原稿を書くことができ,見た目も綺麗になる。また,データ項目だけでなく,上付き・下付き文字やイタリック文字などの指定,英文中のギリシャ文字,文字コードにない特殊文字(たとえば,両向き矢印ほか)などを間違えなく伝えることができる。
 ここでは,例として代表的な手法を2つ,すなわち,1)スタイル機能とRTFを用いる方法,2)LaTeXによる方法を示す。
 
4.2.1 スタイル機能とRTFを用いる方法
 スタイル機能を持ち,文書データ交換形式RTF(Rich Text Format)が使えるワープロソフトを使用する方 法である。RTFはスタイル機能や上付き・下付き文字やイタリック文字などの指定を持った文書データを交換することができる。この条件を満たすワープロソフトには,Microsoft Word,WordPerfect,PageMakerなどが ある。電子原稿の作成例を参考1(1)例1に示す。
(1) ギリシャ文字
 英文の場合はフォント:symbolを用いて書けばよい。
(2) 特殊文字
(a) その名前が書かれたコードリスト(ISO 8879 Information processing − Text and office systems − Standard Generalized Markup Language(SGML)の付録)を使用するよう指示する。たとえば,両向き矢印文字の名前をrlarrowとすれば,&rlarrow;と書けばよい。なお,&名前;の形式はSGMLの形式でもある。
(b) ハードコピー上の特殊文字部分を空欄にして,赤字で記入するよう指示する。
(3) 数式
(a) ワープロソフトの数式エディタあるいはTeXを使って作成するよう指示する。
(b) 行内の簡単な式は,文字,フォント:symbol,特殊文字で入力するよう指示する。
(c) 番号付きの複雑な式は,画像として扱い,受取り可能な画像データのフォーマットを指定する。
(4) 
(a) 受取り可能な表データのフォーマット(Excelなど)を指定する。
(b) 画像として扱う場合は,受取り可能な画像データのフォーマットを指定する。
(5) その他の注意事項
(a) スタイルのフォントや文字サイズなどを著者が勝手に変更しないよう指示する。
(b) 電子原稿をRTF形式で保存するよう指示する。
 
4.2.2 LaTeXによる方法
 LaTeXはTeXにスタイル機能を持たせたものであり,数式の記述能力に優れている点が特徴である。
(1) ギリシャ文字
 \alphaのように書く。
(2) 特殊文字
 その名前が書かれたコードリスト(ISO 8879の付録)を使用するよう指示する。たとえば,両向き矢印文 字の名前をrlarrowとすれば,¥rlarrow;と書けばよい。
(3) 数式
 TeXで書く。
(4) 
 TeXで書く。
(5) その他の注意事項
 スタイルのフォントや文字サイズなどを記述したマクロを著者が勝手に変更しないよう指示する。
 
4.2.3 スタイルファイルの配布
 著者からのスタイルファイルの請求に対し,以下の配布方法がある。
(1) フロッピーディスクなど
 スタイルファイルの入ったフロッピーディスクなどを,スタイルファイルの使い方のハードコピー付きで郵送する。
(2) 電子メールの自動返送
 著者から,指定のIDに電子メールを送ってもらい,自動的にスタイルファイルを返送する。
(3) WWW
 WWWを開設しているところなら,WWW上で投稿規定やスタイルファイルを利用した入力方法などを掲載するほか,著者がスタイルファイルの部分をクリックすれば,自動的に著者のマシンにファイルをダウンロードできるようにする(実際にはFTPという機能を利用している)。
(4) anonymous FTP
 著者からインターネット上のスタイルファイル格納アドレスにアクセスしてもらい,FTPの機能を使ってダウンロードしてもらう。著者がスタイルファイルを容易に取得できるよう,コマンド操作など具体的手順を記述する。
 
4.2.4 テキスト
(1) 必要があれば一行の文字数制限,強制改行の扱い(段落中では用いないなど)について指示する。
(2) 欧米語を使う場合は単語の途中で改行しないよう指示する。
 
4.2.5 テキスト以外(図,写真,表,数式,動画,音声)の共通事項
(1) 受取り可能なソフトウェアとバージョンを指定する。
(2) データ圧縮の可否と圧縮方法(zip,JPEGなど)を指定する。非可逆圧縮の場合,解凍後は元のものより劣化することを著者に周知しておく。
(3) 図,表,写真のキャプションの扱い(テキストファイルの最後にまとめる,別ファイルにするなど)を記述する。
(4) 図,表,写真のキャプション中に記号は含めないよう指示する。(記号の説明は図中で行うなど)。
(5) 1ファイル当たりの容量に制限がある場合はそれを記述する。
(6) 写図,表などでデータとして扱えない場合は,別紙とするよう指示する。
 
4.2.6 図,写真
(1) 受取り可能な画像データのフォーマット(GIF, TIFF, PostScript,ビットマップなど)を指定する。
(2) 解像度は400dpi以上が望ましい。
(3) 現状では,カラーのイメージデータだけの提出では色が厳密に再現されない場合があるため,必要に応じて現物の提出も必要な旨明記する。
 
4.2.7 動画
 受取り可能な動画像データのフォーマット(MPEGなど)を指定する。
 
4.2.8 音声
 受取り可能な音声データのフォーマットを指定する。
 
4.3 スタイル機能を持たない場合
 この場合は,スタイル機能によって暗示的に与えられていた情報,すなわち,データ項目,上付き下付き,イタリックなどの指定,英文中のギリシャ文字,文字コードにない特殊文字(たとえば,両向き矢印ほか)などの情報が無いため,それを別の方法によって電子原稿の段階で補うか,あるいは電子出版処理の前処理の段階で手作業によって補うことになる。上付き下付き,イタリックなどの指定,英文中のギリシャ文字,文字コードにない特殊文字を示すための資料として,ワープロで作成した文書のハードコピーが参考になる。このように手間が掛かるため,電子投稿のメリットが生かしきれていない方法と言える。
 電子原稿の作成方法としては,プレインテキストやテンプレート方式などが考えられる。テンプレート方式はデータ項目を示すタグが先に入力されており,著者はそれに論文内容を入力していく方式である。タグまで著者に入力してもらう方式は原理的には可能だが,著者の負担が大きく,無理があろう。
 
4.3.1 プレインテキスト
 ASCIIのテキスト(.txt)形式で受け取る方法である。参考資料としてワープロで作成した文書のハードコピーを添付してもらう。また,ワープロ文書データをそのまま受け取る方法もあるが,この場合は対応できるワープロソフトとバージョンを明記する。
 プレインテキストではデータ項目を示すタグがないため,データ項目を前処理プログラムで区別するためには,項目の順番と改行が重要なファクターとなる。見出しの後や段落ごとに改行を1回行い,段落内では決して改行しない(自動改行が行われる場合は取る),そしてデータ項目の終わりごとに改行を2回行うなどを指示する必要がある。また,項目の順番を守ってもらうこと,ある項目を使わない場合のスキップのさせ方なども指示する必要がある。こうして電子原稿を作ってもらっても,データ項目をプログラムだけで完全に判定することは難しいため,前処理での手作業が発生するなど問題が多い。手作業によるデータ項目判定のための資料として,ワープロ文書のハードコピーが参考になる。
 プレインテキストは実際にはワープロ文書をASCIIのテキスト形式に変換し,上述の改行を追加して作成することになる。電子原稿の作成例を参考1(2)例1に示す。
(1) ギリシャ文字
 英文の場合は次に示す特殊文字と同じ扱いとする。
(2) 特殊文字
(a) ハードコピー上の特殊文字部分を空欄にして,赤字で記入するよう指示する。
(b) その文字の名前が書かれたコードリスト(ISO 8879の付録)を使用するよう指示する。たとえば,両向き矢印文字の名前をrlarrowとすれば,SGMLの手法によって&rlarrow;と書くか,あるいはTeXの手法によって\rlarrowと書く。
(3) 数式
(a) 行内の簡単な式は,使用可能文字を使って,あるいは,特殊文字と同じ方法で書くよう指示する。
(b) 番号付きの複雑な式は,画像として扱い,受取り可能な画像フォーマットを指定する。
(4) 
(a) 受取り可能な表データのフォーマットを指定する。
(b) 画像として扱う場合は,受取り可能な画像データのフォーマットを指定する。
(5) 写真や図
 4.2の該当部分から実情にあったものを選択する。
 
4.3.2 テンプレート方式
 テンプレートの各データ項目に,ワープロ文書中の該当部分をカットアンドペーストして電子原稿を作成する。プレインテキストの場合と異なり,ワープロ文書から自動変換できない分,著者にとっては面倒になる。電子原稿の作成例を参考1(2)例2に示す。
(1) 上付き,下付き,イタリックなどの指定
 SGMLあるいはHTMLの手法,すなわち,指定開始箇所と終了箇所をタグで示す。たとえば,イタリックの指定は,を開始箇所に,を終了箇所に入れる。
(2) ギリシャ文字
 英文の場合は次に示す特殊文字と同じ扱いとする。
(3) 特殊文字
(a) その文字の名前が書かれたコードリスト(ISO 8879の付録)を使用するよう指示する。たとえば,両向き矢印文字の名前をrlarrowとすれば,SGMLの手法によって&rlarrow;と書くか,あるいはTeXの手法によって\rlarrowと書く。
(b) ハードコピー上の特殊文字部分を空欄にして,赤字で記入するよう指示する。
(4) 数式
(a) 行内の簡単な式は,使用可能文字を使って,あるいは,特殊文字と同じ方法で書くよう指示する。
(b) 番号付きの複雑な式は,TeXの手法で書く,あるいは,画像として扱い,受取り可能な画像フォーマットを指定する。
(5) 
(a) 受取り可能な表データのフォーマットを指定する。
(b) TeXで書く。
(c) 画像として扱う場合は,受取り可能な画像データのフォーマットを指定する。
(6) 写真や図
 4.2の該当部分から実情にあったものを選択する。
(7) テンプレートの配布
 4.2のスタイルファイルの配布と同じである。
 
4.3.3 テキスト
(1) 必要があれば一行の文字数制限,強制改行の扱い(段落中では用いないなど)について指示する。
(2) 欧米語を使う場合は単語の途中で改行しないよう指示する。
 
4.3.4 テキスト以外(図,写真,表,数式,動画,音声)の共通事項
  4.2.5と同じ。
 
4.3.5 動画
 4.2.7と同じ。
 
4.3.6 音声
 4.2.8と同じ。



 
5. 電子原稿の提出方法
ここでは,論文審査後に初めて電子投稿を行う場合を主として想定する。
 
5.1 ディスク
(1) ディスクの提出時期を明記する(審査終了後など)。
(2) ディスクの提出の宛先を明記する。
(3) 対応できるディスク種別(サイズ,フォーマット,記録密度)を指定する。
例  FD
MO
CD-R
DVD-RAM
(4) テキストは1ファイルにまとめ,図表,数式などは個別ファイルにするなど,ファイルのあり方を指示する。また,ディスク中に原稿と関係のないファイルは含めないよう指示する。
(5) テキスト,画像,表などのファイルは,論文番号や著者名や図番号などを利用して,一貫したファイル名(例:a1101.rtf,suzuki2.gif)を付けるよう指示することが望ましい。なお,ファイル名に使用する文字は英数字とする。
(6) 最初から電子投稿を行い,修正ファイルを再度投稿する場合は,修正ファイルの命名法を定めることが望ましい。
 例 honbunrvなど。
(7) LaTeXならソースファイルのほか,コンパイルに必要なソースファイルも一緒に提出するよう指示する。
(8) データ圧縮の可否,圧縮ソフトウェアについて指定する。
(9) 最初から電子投稿する場合などは,投稿票をディスクとともに提出するよう指示する。投稿票に書く内容を,ディスク中の1ファイルとしてまとめる方法もある(このファイルは圧縮しない)。
(10) 投稿票への記載事項としては下記のようなものがある。
 機種名,ディスクの種別(サイズ,フォーマット),テキスト形式,ハードコピーの枚数,図,写真,表,式の枚数,ディスク中に含めるファイルのファイル名とそのソフトウェアとバージョンのリスト,受付番号,著者名,著者の所属機関名,連絡先住所,連絡先電話番号,FAX番号,メールアドレス,圧縮ソフトウェア名,シリーズ中の一論文であることなどの注記
(11) ウィルスチェッカーで検査するよう指示することが望ましい。
(12) ハードコピー,原図,写真なども併せて提出するか否かを指示する。また,提出する場合はその部数を指定する。ハードコピーなどの内容が最終ファイルと一致しているか確認するよう指示する。
(13) ディスクラベルへの記載事項を指示する。記載事項は(10)より選択する。
 例 受付番号,著者名,機関名,ファイル名,機種名,ソフトウェアとバージョン
(14) 郵送物一覧を示す
 例 (a) ディスク, (b) 投稿票, (c)別紙(テキスト,数式,表,図,写真)
(15) 保護のため,ディスクはプラスチックケースに入れるなど,郵送形態を指示する。
(16) ディスク返却の有無を明記する。
(17) 著者にオリジナルディスクを保管するよう指示する。
 
5.2 電子メール,FTP
 郵送時間がかからず,郵送費も格段に安くなるが,現時点では文字化けやインデントのずれなどの問題もあるため,紙媒体による投稿や場合によってはFAX投稿の併用も考えられる。ここでは,審査後に電子メールの添付ファイルとして投稿する場合を主として想定する。
(1) メールの送信時期を明記する(審査終了後など)。
(2) まちがいなく受け取ったことを著者に知らせるため,何日付け(必要に応じて時刻まで)で受け取ったかの受理通知(返信メールなど)を出すが,それを出す時期(メール投稿後一週間以内など)を明記する。
(3) 宛先のメールアドレス,又は転送先を明記する。FTPの場合は,転送のためのコマンド操作を具体的に記述する。
(4) FTPの場合は,パスワードやシリアル番号を投稿者に知らせるため,事前に連絡するように指示する。
(5) テキストは1ファイルにまとめ,図表,数式は個別ファイルにするなど,ファイルのあり方を指示する。また,メール中に原稿と関係のないファイルは添付しないよう指示する。
(6) テキスト,図表,数式などの添付ファイルは,前述の一貫したファイル名を付けるよう指示することが望ましい。
(7) 最初から電子投稿を行い,修正ファイルを再度投稿する場合は,修正ファイルの命名法を定めることが望ましい。
 例 a1101re.texなど。
(8) LaTeXならソースファイルのほか,コンパイルに必要なソースファイルも一緒に送るよう指示する。
(9) データ圧縮の可否,圧縮ソフトウェアについて指定する。
(10) 投稿票をメールの本体中あるいは添付ファイルの1つとしてまとめる方法もある(このファイルは圧縮しない)。
(11) 投稿票への記載事項としては下記のようなものがある。
 機種名,テキスト形式,メールに添付するファイルのファイル名とそのソフトウェアとバージョンのリスト,受付番号,著者名,著者の所属機関名,連絡先住所,連絡先電話番号,FAX番号,メールアドレス,圧縮ソフトウェア名,シリーズ中の一論文であることなどの注記
(12) ウィルスチェッカーで検査するよう指示することが望ましい。
(13) ハードコピーや原図,写真なども別途提出するか否かを指示する。提出する場合はその部数と郵送時期(メールしてから数日以内など)を指定する。ハードコピーなどの内容が最終ファイルと一致しているか確認するよう指示する。
(14) メールを出すときのタイトルの命名法も定めることが望ましい。たとえば論文番号をタイトル中に含ませるなど。
(15) 同じ論文を間違って二重,三重に投稿することがないよう指示する。
(16) 著者にオリジナルファイルを保管するよう指示する。



 
6. 電子出版物
 電子原稿はSGMLのタグ付けを行って構造化文書にした後,最終成果物として伝統的な紙媒体の雑誌以外にも多様な形態を取りうる。以下の図はその例である。学協会は必要な公開法を選択する必要がある。

図3 電子原稿の最終成果物の例

 雑誌の形態として,伝統的な紙媒体の他,現時点ではCD-ROMなどの保存用出版物ならびにHTMLやPDFなどを用いたネットワーク上での電子出版物などの形態を想定できる。伝統的な紙媒体の出版物に比べ,CD-ROMやネットワーク上を流通する電子出版物は,従来載せられなかった「音声」や「動画」などのデータを取り込むことができる。さらに,電子原稿は,すでに付与されているSGML/XMLタグをHTMLタグに変換することによって,WWW上で公開することもできる。このような電子出版物は,テキストデータとしての全文データ,もしくは,紙媒体の雑誌のように体裁を整えた電子画像データ,あるいは,音声データなどの形式をとることができる。また,これらの最終成果物は,オンラインデータベースや電子図書館を構築する際のリソースとしても用いることができる。
 電子出版物は,電子原稿に付与したSGML/XMLのタグを有効に活用する検索エンジンを組み込んだ情報検索システムと組み合わせることによって,紙媒体ではできなかった柔軟な検索を行える。さらに,検索に用いた全文データを実際に読む場合には,印刷物を電子画像化したデータや印刷物に近いイメージを得られるPDFファイルと組み合わせるなどの工夫によって,読みやすさを確保し,高度な情報提供に結びつけることができる。さらに,WWW上の雑誌同士であれば引用文献にリンクを施し,直接お互いの引用文献を表示させることも可能である。



 
7. 電子投稿規定に記載すべき内容
 これまで述べてきたように,電子投稿規定に盛り込むべき事項としては下記のものが挙げられる。
(1) 電子原稿の作成方法
(a) テキスト
(b) 図
(c) 写真
(d) 表
(e) 数式
(f) 特殊文字
(g) 動画
(h) 音声
(2) 電子原稿の提出方法
(a) ディスク
(b) 電子メール,FTP
(3) 著作権
 電子原稿の著作権の帰属について明記する。電子原稿や出版物を著者自身が再利用する場合には,その範囲・制限などについても言及することが望ましい。また,学協会・出版者などが再利用する場合も同様である。なお,マルチメディア関連の著作権法については,現在議論の途上にあるため,今後の動向に注意を払う必要がある。
(4) 原著論文の定義の明示
 学協会・出版社は,論文投稿前に著者自身がWWW上の「ホームページ」などを用いて発表した内容を論文として投稿してきた場合,これを「原著論文」と認めるか否かについて規定を明示する必要がある。この規定は学協会・出版社の出版物が印刷物か電子媒体かに拘わらず必要である。
(5) 電子原稿の作成例
(6) 電子出版物の体裁見本
 電子原稿が印刷物,CD-ROM,WWWなどになったとき,どのような体裁になるかその見本を示すことが望ましい。
(7) 電子投稿することのメリット
 電子投稿によるメリットを投稿規定中に盛り込むことが望ましい。



 
8. その他の留意事項
(1) 電子情報に対する公知証明
 学協会において,論文誌などで発表された論文に対して,特許公知などに伴う内容証明を行う場合,証明内容,方法について明示しておくことが望ましい。特に電子出版物のみで出版を行った場合には,現時点では学協会において発表証明が可能であるか否かの判断が難しいので,今後の動向に注意を払う必要がある。
(2) その他
(a) 投稿規定をインターネットに載せた場合は,出版物の方にそのURLを明記する。
(b) 文字化けの原因となるため,半角カタカナは使用しないよう指示する。
(c) その文字の名前が決められていない特殊文字については各学協会で定める。



SIST 14の目次へSIST トップページへ